第8回 伊豆半島の灯台を訪ねる旅
2006/6/11(日)〜12(月)


6/11(日)
 灯台グッズの店『ライトハウスキーパー』が企画する9回目の灯台巡りツアー、伊豆半島の灯台巡りツアーが幕を開けた。

 今回のハイライトは、下田から漁船で40分ほどの孤島に建つ神元島灯台。個人ではなかなか行くことのできないこの灯台を、海上保安部の方々が特別に案内してくれるとのこと。「この又と無いチャンスを逃してはならない!」と全国から集まった灯台ファンは総勢28名。
 遠方は高知から初参加のご婦人、三重からのツアー常連客である灯台マニアファミリー、灯台守だったお父上のルーツを辿る方、灯台を含むミニチュアグッズを作る若きアーティスト、灯台を描き続ける方、自転車で灯台巡りをする青年、灯台と海を愛するロマンチスト等、年齢も20代から80代とさまざまな人々が集まった。それにしても、車7台で大移動するという大胆な企画。果たしてうまく行くのだろうか…?
 そんな心配もつかの間、朝7時半に藤沢を出発したライトハウスラバーズ一行は1号車から6号車(7号車は途中から合流)までがずらりと行儀良く並んだまま、休憩場所である「道の駅、伊東マリンタウン」に到着する。

 日曜日のせいか渋滞に巻き込まれることもなく、順調な走り出しとなり、パーキングエリアで30分程の休憩を取る。朝が早かったせいか、簡単な朝食とコーヒーで眠気を覚ます姿が見られる。そして、今宵の飲み会に備えて、早速御つまみを購入する姿も…。

 カーブの多い伊東周辺のドライブ。雨が降ったり止んだりのあいにく天気ながら、時々顔を出す太平洋は穏やかで優しい表情をしている。そんな海を横目に車を1時間ほど走らせると、本日の昼食の場所である「網元料理『魚庵』」に到着する。 
 ここで三重からはるばる来られたご家族(7号車)が合流。全員集合したメンバーは、伊豆の新鮮な魚介を堪能しながら、簡単な自己紹介を行う。皆さん、朝の緊張した面持ちが少し和らいできたようだ。

 さぁ!ここからが灯台巡り本番。
 …と意気込んで店の外に出たものの、空は灰色。雨はさらに激しさを増している。ため息混じりになりながらも、ツアー最初の灯台への期待がこみ上げてくる。曲がりくねった狭い坂道を上へ上へと車を走らせ、やがて旧稲取灯台に接近する。

 日本初の女性灯台守萩原すげさんが大正3年から27年間勤務されたことで有名な旧稲取灯台は、山奥にひっそりと隠れるように佇む小さな灯台だった。3メートルにも及ばない灯台は、石造りで「純和風」といった赴き。周りの竹やぶも手伝ってか、何やら日本昔話に出てきそうな雰囲気をかもし出している。

 灯台のレンズが木々の間から見つめるのは、天気が良ければ絶景であろうと思われる水平線。今や役割を終え永い年月を感じさせる古びた灯台の周りには、敬意を示すかのように美しい花々が植えられている。この山間の寂しい場所で、たった一人船の安全を守っていたという萩原すげさん。彼女の生き様には、ただ頭の下がる思いがする。船乗りをしていた夫は材木船の作業中に瀕死の重傷を負い、退院後も働くことができなかったため、彼女が夫と十人の子供をかかえながら灯台守と海産物の行商をして一家を支えたという。この小さな灯台から目の前に広がる伊豆の海を、一体どんな気持ちで眺めていたのだろう?

 さて、しみじみと稲取灯台を堪能した一行は、次なる目的地、爪木埼灯台を目指す。いつの間にか、空は明るくなり、雨は止んでいる。運が向いてきたようだ!

 伊豆半島の東海岸から突き出た須崎半島の東南端に立つ白亜の灯台、爪木埼灯台。周辺には岩場の続く美しい海岸が広がり、見晴らしの良い灯台に続く道からは、遠く神元島を臨むことができる。激しい海風にも負けず、開放感のある灯台までの道を、ある人はおしゃべりに花を咲かせながら、ある人は景色に酔いしれながら、ある人は撮影に夢中になりながら、それぞれ満喫する。

 間近に見る爪木埼灯台は、シンプルな形で空高く伸び、まさに優美といった表情。そして、灯台が眺める海は絶景!伊豆の海の豊かさと美しさにあらためて感動する。シャッターを切る回数も増えてきたようだ。

 爪木埼から車をさらに南へ進めると、まるで雨を追いかけて移動しているかのように天気は下り坂に…。ところが、石廊崎に到着する頃には不思議なことにぴたりと雨が止む。雨上がりのしっとりとした空気の中でアジサイを横目に歩く風情のある山道。木々の間から真下に見える山間の漁港は、澄んだ緑色の海水のせいか、神秘的な感じさえする。一日の疲れも手伝ってか、黙々と歩くメンバーも出てくる。相変わらず毒舌を飛ばしている人もいるが…(!)。

 山間の道を10分ほど歩くと、石廊崎灯台がひょっこりと顔を見せた。波の荒い難所として知られる伊豆半島最南端の石廊崎灯台は、波から守られるように小高い丘の上に建っている。イギリス人ブラントンによって明治時代に建てられた日本初の木造灯台としても有名である(昭和8年、再建)。

 灯台を通り過ぎると、絶景でありながら恐ろしくもある絶壁の岩場に出る。ごつごつと変形した岸壁に荒波が押し寄せる風景は、鬼が島といった雰囲気さえ醸し出している。メンバーの中には「ここまで見れば十分!」と苦しい言い訳をして後ずさりする姿も…。そして、勇敢なメンバーだけが岩沿いに作られた狭い階段を降り、波に砕き落とされてしまいそうに頼りない木造の神社でお参りをする。そこに、じゃらじゃらと大量なお賽銭を入れている方が約一名。さすが「太っ腹!」と思いきや、大量な一円だったことが発覚。…神様が太っ腹であることを祈ろう。

 刺激的な石廊崎灯台に後ろ髪を引かれながら、一行は本日の宿、その名も「ライトハウス」へ…。

 早速の夕食は、バーベキュー。食べきれないほどの肉と魚が並び、次から次へと焼いては食べてと忙しい。伊豆という場所柄、魚介類の新鮮さは感動モノながら、その量の多さには驚くばかり。やがて、一部のメンバーの大騒ぎする声が聞こえてくる。伊勢海老と格闘している模様。網の上にのせた伊勢海老の活きが良すぎて、フォークで力いっぱい押さえながら焼かなければならないのだ。大騒ぎの挙句に食べた伊勢海老の味は最高に美味だった…に違いない。悲しいことに、その味よりもフォークで抑えているときの残酷な感触の方が印象に残ってしまった。

 ライトハウスラバーズの長い夜は、午後21時、貸しきりの食堂にて、缶ビールとつまみを並べての大宴会へと移る。カラオケで美声を披露する方、久しぶりの再会に話を弾ませる方々、飲んで正体を露にする方、冗談が過ぎる(?)方など、昼間とは違う皆さんの一面が顔を出し、宴は大いに盛り上がる。2次会は3人部屋の和室に移動し、こぢんまりとした宴会となる。飲んだお酒が次の日に与える影響など知る由もなく、こうして楽しい夜は更けていった。


6/12(月)
 神子元島灯台の待つ朝は爽やかな晴れ間とともに訪れた。新鮮な朝の空気を吸いながら、宿の周りを散歩してみると、昨夜は暗くて気付かなかった美しい海岸や趣のある藁葺き屋根の家屋が顔を見せる。古き良きものを残した下田という土地や人々の温かみがほのぼのと伝わってくるようだ。

 乗船は8時45分。下田海上保安部の方々が出航の準備に取り掛かり、皆興奮を抑えながら次々と船に乗り込む。丁度28名がきれいに納まるほどの大きさの船は、意外なほどのスピードで動き出す。そして、予想外に激しく揺れる。30分ほど経過した頃だろうか。小さな孤島の上の灯台が輪郭を見せ始める。船の揺れに神経が集中していたメンバー達も、立ち上がって灯台を目で追う。撮影に熱が入り、船から体を乗り出す姿も見える。そして、その頃から一人二人と青白い顔が目立つように…(!)。強がっていたメンバーさえも、さすがの揺れと昨日のお酒が響いたのか、船酔いに襲われる。それ以外の鈍感な…いや、“タフな”メンバーは、着々と接近する灯台に夢中といった様子。

 日本の灯台としては珍しく白と黒の縞模様神子元島灯台は、海抜30メートル、赤銅色の岩に草がへばりついているだけの孤島に建っている。打ち寄せる荒波を見下ろす姿が、実に凛々しく健気に映る。黙々とシャッターを切る人、その姿に見とれて言葉を失う人、船酔いで言葉を失う人…と、船内が暫し静まり返る。残念ながら、うねりが高いため、船は島を目前に一旦停止し、上陸はせずに海の上から神子元島灯台を眺めることとなる。この10分ほどの時間が、タフなメンバーには短く、船酔い組にとっては長くつらい時間であったことは言うまでもないだろう。

 船旅を終えた一行は、下田海上保安庁の会議室にて一休み。海上保安庁の取組みを紹介した興味深いビデオを鑑賞する。挨拶をされた海上保安部の部長さんが、意外なほどきさくでユーモアのある方だったのは印象的だった。船酔い組にも余裕の笑顔が見え始めた頃を見計らって、下田のダウンタウン(?)に位置するレストラン「平野屋」へ移動。


 大正ロマン風の店内には、至るところに器やアクセサリー等、アンティークの品々が置かれている。年代物の蓄音機に無造作に置かれた数枚の古いレコードを、懐かしげに見つめるメンバーと珍しさに興味津々のメンバーが共に囲んで話に花を咲かせる。ライトハウスラバーズは実に年齢層が広いのだ。平野屋での昼食の一時は、すっかり打ち解けたメンバー同士の会話や写真撮影に盛り上がる楽しい時間となった。

 いよいよ次なる灯台がツアーの最後を締めくくる門脇灯台である。初日と比べて穏やかな天気の中、7台の車は順調に城ヶ崎海岸に到着。駐車場から林を抜けると、イメージする灯台の形とはほど遠く、珍しい形をした門脇灯台が現れる。まるで展望台と灯台をあわせたような顔をしている。

 70年代を思わせるような色の螺旋階段をひたすら上ると、伊豆の海が一面に広がる。木のてっぺんから見下ろすような、灯台ならでは風景。そして、眼下には城ヶ崎海岸の激しい波と岩場が広がる。つり橋を渡りながら眼下の海に目を落とすと、山の斜面にひっそりアジサイが咲いている。あまりに可憐なその姿を教えようとたまたま声をかけたのは、つり橋恐怖症のメンバーだった。船酔いとつり橋の二重攻撃がトラウマにならないと良いのだが…。

 午後4時30分、行きの休憩場所でもあった「道の駅、伊東マリンタウン」に到着。28名のメンバーは東京組、藤沢組、三重組がそれぞれの帰路につく。

 たった一泊二日の旅が名残惜しいのは、同じ感動を共にするからなのかもしれない。

 残念ながら上陸は果たせなかったものの、神子元島灯台への船旅が残した不思議な高揚感は、次なる旅への期待へとつながるだろう。そして、ライトハウスラバーズの皆さんとの再会へと…。
                                                             藤木 裕子





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