第25回 ニューイングランドの灯台巡り
    2018年6月6日〜12日


2018年6月6日(水)から同年6月12日まで、灯台を愛する人々の会「ライトハウス・ラバーズ」の山口代表をはじめとする有志メンバー13名は、アメリカ東海岸のボストンからメイン州にかけて、現地泊5日機中泊2日の旅に出ました。

第1日(6月6日)
この旅では、のっけからアクシデントに見舞われました。これを乗り超えて、事故もけがもなく帰国できたのはまさに奇跡としか言いようがありません。美しい灯台を紀行文でご紹介する前に、この酷い話を聞いてもらいたいと思います。

成田発の飛行機(American Air Line)は順調に飛び、ボストンへの中継点のダラス空港で入国手続きをした時です。13人中11人が別のラインへと移動させられました。それは再審査を意味しています。しかもそこにいた入国審査官はただの3人。その3人をめがけて、はねられた外国人が百人余り列を作っていました。

新方式だといいます。顔認証と指紋とパスポートを機械に読み取らせ、OKであれば、物の10分で入国手続き終わり、なのですが。機械がダメだというので、なんだかんだと人間の尋問に時間かかり、やっと許可。結果的に分かったことは、顔認証は顔をちゃんとカメラに向けてフリーズ、ということと、指紋をしっかり押し付ける、ということ。それが不十分だった、というだけのことのようです。職員が機械の横にいて、コツを説明すれば外国人でもわかるはずなのに、ただ機械だけを導入して、できないのはおかしい、という姿勢と、乗り継ぎ客への配慮の無さには憤りさえ感じましたね。

それで、ようやく揃った全員が国内線のAmericanのカウンターへトランジットの申し込みに行くと、搭乗は締め切った、と受付拒否。山口代表、国際人水木さん、英語ペラペラの山本夫人が大奮闘して、なんとかボストンまで行けることになったものの、予約の空いている便を探しに探した結果、13名が3分割されてしまいました。第1グループは、なんと、ダラス→約2時間後アーカンソー(どこだいそれ?)→1.5時間シャーロット(それもどこだい?)→2時間でボストン。しかも、その間空港での待ち時間が5時間もあったり、逆に10分しかなかったり、走り回って搭乗ゲートへ1分前に走りこむ曲芸も生まれた、波乱万丈の移動劇となりました。他の第2・3グループも、シカゴ乗継ボストン行き、ニューヨークラガーディア乗継ボストン行き、など似たり寄ったりの冒険旅行となりました。結局最終グループが最終目的地ボストン空港に到着したのは、夜中の午前0時18分。当初予定から10時間余の遅れ。夕飯を食べた人も少なく、最悪のスタートとなったのでした。

しかし、神は我々を見放しませんでした。2つの奇跡が起こったのです。一つは全員が一人として迷子にならず、けがをすることもなく、ボストン空港へ集合できたこと。そしてもう一つ。あのアメリカで、全員の荷物が一つとして壊れたり無くなったりせずに、ちゃんとボストンの集荷場まで届いたこと。これには思わず全員が笑顔になりました。さらに、いいことは続くものです。私たちのツアーのバスの運転手が、なんとバスごと、待っていてくれたのです。真夜中まで。大きな拍手が沸き起こりました。

<ようやくボストン空港に到着。疲れと安堵の入り混じった顔>

第2日(6月7日)
ということで、いよいよニューイングランドの灯台旅が始まりますが、地理的にどうなっているの?とおっしゃる方のために簡単に説明しますと、ボストンは、ニューヨークの北東へ電車で2時間ぐらいの海岸線にあって、マサチューセッツ州の最大都市です。ボストンから南へ車で1.5時間ほど走ると、ケープコッドの入り口となります。逆にボストンから北へやはり1時間ほど走ると、ポーツマスからメイン州になります。そこからまた1時間でポートランド。メイン州の最大都市です。メイン州の海岸線は入り組んでいて、そこに70余りの灯台があるといわれています。我々はポートランドからさらに北の海岸にまで足を延ばします。



<ケープコッドとメイン州灯台>

さて、第1日はホテルHampton Inn&Suites到着後、直ちに就寝だったので、実質2日目からケープコッドの主要灯台3つと半分を巡ることになります。

@ケープコッドの突き出た半島の最南に「チャサム灯台」Chatham Lighthouseがあります。青く深い空に白い灯塔と黒い灯篭、10秒に2回白閃光で回転する丸いフレネルレンズ。コーストガードの基地でもあるようで、過去犠牲になったコーストガードの船舶が併せて展示してありました。赤い屋根の宿舎に、アメリカ国旗が風に翻っています。赤・青・白・緑の鮮やかな色の取り合わせは、周辺の整備された公園や駐車場とも相まって、なぜか羨ましくなりました。この気持ちは旅の間、ずっと続くのですが。

Aケープコッドの半島を北へと移動して、中ほどに「ノーセットビーチ灯台」Nauset  Beach Lighthouseが佇んでいます。ここの海岸は美しいことで有名。同時に浸食が激しいことでも有名。それゆえに灯台が必要とされる場所なのです。それだけに、灯台にも変遷がありました。最初は1基だけ。そのうち重要性に鑑みて、3基に増設され、「ノーセットの3姉妹」と呼ばれていましたが、さらに単閃光の3基よりも回転式の1基3閃光の方が視認されやすいと、1基に変更されました。「ザ・ビーコン」が当時のあだ名。現在はさらに、鋳鉄製で、毎5秒に1回赤・白交互閃光へと進化したものとなっています。こうした変遷にもかかわらず、いま、ノーセット灯台は風情のある落ち着きで、赤と白に塗り分けられた灯塔と黒い灯篭と回廊がチャーミングです。それに灯台の前には2人が座れるベンチまであります。心憎い配慮ですね。

そうこうしているうちに、気が付けば昼食時間。近くの街の「PJ’S」というファミリーレストランで、めいめい好きな昼食。と思ったら、全員が「ロブスターロール!!」。(大振りのロブスターをパンにはさんでマヨネーズをかけたものにクラムチャウダーとジュース付き)。皆さんおいしいものはわかっているのですね。

<ノーセット灯台にて>

B「ハイランド灯台」Highland Lighthouse Station 。ケープコッドで、最も古く、全米でも20指に入る旧さと歴史のある灯台。白く高い塔に黒の灯篭と二重の回廊がユニーク。内部はオープンでボランティアガイドが説明してくれながら、灯室まで登ることができます。玻璃板(はりはん)は大きく,黒の骨子で固定されています。フレネルレンズが5秒1回白閃光で、光を出しながら回っている傍で観察できるなんて、そうめったにないことです。この灯台も3度の引っ越しを経験しています。もともとケープコッドは氷河時代に押し寄せた氷河の辺端にあって、ロングアイランドとつながる2万年前の氷河堆石からできているので、脆いわけ。だから沖合を流れる3つの海流で堆積物は流され、削られ、あるいは別なところへ運ばれ、新しい土地を作る。そういうところの海底は荒れ易いし、暗礁も多くなる。したがって、灯台が重要になるわけ。(一方で、だからロブスターがよく獲れる?)この灯台には楽しいギフトショップが併設されています。もちろん以前は吏員の退息所だったのでしょうが、ボランティアの力を借りて、お店は大繁盛の様子。灯台デザインのマグカップやちょっとした飾り物が人気。

さて、夕食です。「The Lobster Claw」というレストランで会食。ロブスターの大きさに困りながらも、皆さん笑顔満開です。ある奥様は「私はこれを食べに来たのよ!」。西村さんが「千葉のイセエビと同じさ」と、あっという間に身と殻をはがし、やり方を教えてくれる。ホンビノス貝たくさん、クラムチャウダーたくさん、とにかくたくさん満腹した。シャルドネのおいしかったこと。いったい何杯飲んだことだろう!

<ロブスターのご馳走>

C食後、初日のてんやわんやで行きそびれていた「サンディネック灯台」Sandy Neck Lightへと車を回して、遠目で見学することに。サンディネックは半島に囲まれたケープコッド湾に突き出た小さな砂洲。灯台は300mmの望遠レンズでもよく見えないくらい遠かったです。彼我を隔てる湾の水はいかにも豊かそうな緑色。なので、この辺り、ハマグリやアサリがいっぱい採れるそうです。潮干狩りをしている家族も。浜にはニセアカシア(和名ハリエンジュ)の木が多く、白い花と甘い香りが辺りを覆っていました。花の名前は大石夫人からうかがいました。 ホテルHampton Inn&Suitesへ戻り、時差と寝不足と興奮で疲れた体をいやし、早めに就寝。明日はいよいよメイン州へ出発だ。

第3日(6月8日)
今日はボストンを過ぎ、メイン州に入り、ポートランドを目指します。途中、ケープネディック灯台を見て、ポートランドでは2つあるいは3つの灯台を巡る予定。8:30出発、楽しみです。

D「ケープネディック灯台」Cape Neddic Lighthouse(別名Nubble灯台)は人々の暮らしの傍で、当たり前のように明るく立っている島の灯台でした。狭い海峡を隔ててはいますが、灯台守は島へ渡るのにロープ式ゴンドラを利用していました。人々は犬を連れて岩場を散歩し、あるいはベンチに腰かけてぼんやり灯台を眺め、いい時間を過ごしています。整備された公園や売店、レストランがあって、心が弾みます。

さて、もう昼食の話ですが、公園レストランのFox’s Lobster Houseで窓から灯台を見ながら、ビールの3グラス試飲とか、ロブスターブリッシュとか、久しぶりの野菜サラダとか、大いに楽しみました。お土産物屋さんで全米灯台地図やメイン州灯台地図、Tシャツなど、つい財布が緩みます。女性たちもそれぞれかわいいものを物色して大満足の様子。

E「ケープエリザベス灯台」Cape Elizabeth Lighthouseは予定には入ってなかった灯台ですが、ポートランドへの道筋にあるので、寄ってみることに。この灯台は元ツイン灯台で、今は一つ残っているだけですが、エドワード・ホッパーが描く灯台の素材になっています(「トゥーライツの灯台」)。また、彼はポートランドヘッド灯台もよく描いていますが、モダンな孤独とでもいうような、強い存在感が特徴ではないでしょうか。ケープエリザベスの海岸線もなぜか荒々しい存在感のある風景です。ホッパーはそういうところに惹かれたのでしょうか。

F「ポートランドヘッド灯台」Portland Head Lightはコスコ湾口にあり、ポートランドハーバーへの進入口を示す重要な灯台で、メイン州では最も古く、ジョージワシントンの命で1791年に完成。その頃の世界は、日本では松平定信の寛政の改革の頃で、フランスではフランス革命が勃発した頃です。そして、フレネルレンズの発明者オーギュスタン・ジャン・フレネルが誕生したのが、1788年です。最も早く建設された灯台という定義は難しいのですが、アメリカではとにかく最も早い部類でしょう。今のポートランドヘッド灯台は、広々とした芝生の公園に囲まれ、高い青空に赤い屋根が映える博物館が併設されています。ハマナスのピンクの花がところどころに咲く遊歩道を気持ちよく歩くと、思いがけず、灯台の裏側の崖を見ることになります。このビューポイントも圧倒される美しさでした。気持ちを残しながら、次の灯台へ向かいます。

<ポートランドヘッド灯台>

G「ポートランドブレークウオーターライト」(別称バグライト防波堤灯台)Bug Lightはハーバーの入り口にあって、ハーバーを嵐から守る長い湾曲した石造りの防波堤の先に、白黒でかわいらしく建っています。漁船やヨットが灯台の前をたくさん行き来しています。コスコ湾はロブスターの産地でもあって、その漁は籠を沈めて生け捕りにする伝統的な方法のようです。ハーバーからクルーズ船がポートランドヘッド灯台まで出かけるようですし、ロブスターの体験漁やアザラシ見学船もあるようです。僕はこの灯台、結構好きですね。

<バグライト防波堤灯台>

防波堤の先にある灯台といえば、バグライトのすぐ横にある「スプリングポイントリッジ灯台」Spring Point Ledge Lightはユニークな形で目を引きました。ちょうど白黒のスパークプラグのような形。湾内に長く伸びた防波堤の先端にあります。この灯台がマリーナの出入り口。日本でいえば「湘南港灯台」みたいな感じでしょうか。

さて、今日の灯台巡りはこれにて終了。お天気にも恵まれ、美しい自然・ほれぼれする灯台・ゆっくりした時間・おいしいロブスターにも感謝、感謝。となると、寄りたくなるのがスーパーです。なぜって、地元を知りたいし、今晩の宴会用の買い物をしたいわけですよ。そこは山口さん、よく心得ていて、みんなでスーパーへ寄り道。皆さんいろいろなものを購入なさっていましたっけ。

ポートランド郊外のヒルトン系「ダブルツリーポートランド」Doubletree Hotel Portlandへチェックイン。まずは夕食。今日は近くのイタリアン「Uno Pizzeria & Grill」で。料理が変わったので、食欲も旺盛です。ホテルへ戻って、山口さんの部屋でワインの大宴会の開始。おつまみを持ってくる人、イスが足りないので持ち込む人、話題を提供する人、にぎやかです。しかしそこは紳士淑女。時間ともなれば、明日のことを考えて「ではまたね」と引き上げたのでした。

第4日(6月9日)
ホテルで朝食後8時出発。メイン州の北東部のミッドコーストへ向かう。

「ペマキッド灯台」Pemaquid Point Lighthouse。小高い丘の上に立つ白塔と黒の灯篭、付属のアートギャラリーと博物館。緑の公園にはピクニックベンチも。灯台守の家を改装した博物館の二階は、アパートメントホテルになっていて、結婚式や新婚旅行などにも利用されるらしい。確かに灯台から見下ろす岩の海岸と大西洋は、本当に価値ある美しい景観だから、何度も結婚式をあげたくなるのが心配だ(?)。岩の海岸に降りて見上げる灯台がまたすごくいい。「ああ〜こういう灯台施設が日本にもあったらなあ〜」という声が聞こえてきました。近いイメージでいえば、宿泊できる「三保関灯台」のような感じか。ブリストル市とボランティアで管理しているとのこと。

<ペマキッド灯台>

この地方は、やっぱり田舎で、レストランらしいレストランはないようなので、途中の街で、サンドウィッチを購入。次の灯台へ向かう途中、郊外の歴史を感じさせる町ウオーレンWarrenの公園でピクニックランチを楽しみました。

ところがこの町にはアンティークショップがあって、ここに嵌まってしまった人が、いい買い物をしたようです。ビートルズの4人のサイン入りシルクスクリーン。額は不要なので外してもらって、賞状さながらに丸めて持ち帰った人。アメリカのガラス製食器発祥の地、サンドウィッチ(という名前の町)製の古いガラスプレートを購入した人。それぞれ、大大満足の様子でした。さて、次の、今回最後の灯台は。

I「マーシャルポイント灯台」 Marshall Point Lighthouse。ここがいいのは、なんといっても灯台へ架けられた、真っ白な木製の橋の存在です。小さな美術館とギフトショップ(2階には写真家のカップルが住んでいる)が建つ岸辺から、かなり海へ伸びた橋。なぜそうなったのかはわかりませんが、これがすごくいい。映画の「フォレスト・ガンプ」にも登場しています。付近を散策していると、確かに灯台から霧笛が鳴りました。何度も。晴れていたし昼間だし、疑問に思いましたが、聴き間違いではないでしょう。ギフトショップのおじさんに尋ねても、そんなはずはない、という。何だったのでしょうか、さすがの山口さんも首をひねっていました。海岸には貝やガラスのカケラが漂着していて、思い出いっぱいのクラフトになりそう。ご婦人たちが腰をかがめて探していました。少し雲が出て色づき始めた空、沖で水脈を曳くロブスター漁船、白いけれど逆光で影になった灯台。別世界に引き込まれていくようです。裏庭には歴史を重ねた大きなラベンダーが香りを放っていて、芝生の上にはかつて使われていた、差し渡し1mはあろうかと思われる青銅の霧鐘が残されていました。当時の灯台守を想ってか、なぜか胸詰まる思いがしました。

<マーシャルポイント灯台>

灯台を後にして、別荘が並ぶ森を抜け、ポートランドへ戻ります。別荘や美しい建物の間には巨大な樫の木(オーク)が陰を作るように何本も立ち並んでいます。オークの樹の下には妖精が棲むという。オークの若木は日本の5月のようにさわやかな緑の葉が輝いています。

ポートランドでは、ダウンタウンのウォーターフロントにある陽気なレストランで夕食をしました。若いテキパキ動くウェイトレスさん。独身(?)の男性たちは記念写真まで撮っていました。この古い港町は歩くだけで楽しい。赤茶のレンガ造りの石畳。ショウウインドウも落ち着いた光でしっかりした歴史を感じます。明日はボストンまで長距離を戻ります。

第5日(6月10日)
山口さんの配慮で出発は10時となりました。少し楽になった。

一行は、ボストン美術館Museum of Fine Arts, Bostonへ行くグループと、ハーバード大学へ行くグループと市内散策グループとに別れ、それぞれバスが送ってくれることになりました。大変ありがたかったです。

ボストン美術館では印象派の作品を中心に見たのですが、浮世絵はどこかに貸し出されていて、全く見られなかったのは残念でした。ハーバード・グループはハーバードグッズのお土産購入。市内観光グループもクインジーマーケットでお買い物だったようです。

夕方5:30に再集合して、「ユニオンオイスターハウス」Union Oyster House で夕食。ここで最後とばかり、名物クラムチャウダーをしっかりいただき、シャルドネもしっかり。帰り際、ケネディ大統領のご愛用席へご挨拶して、バスへ。バスは思い出を乗せてエアポートヒルトンへ。

第6・7日(6月11-12日)
帰国の日。何もなければいいけれど、と第1日目の悪夢を思い出しながら、ヒルトンのバスでボストン空港へ。多くの人は帰国ですが、数名はまだ旅を続けます。その方たちも空港まで見送りに来てくださり、心強かったです。ボストンからシカゴ経由日本まで12時間のフライト。結果的に何も起こらず、無事成田へと到着しました。成田の入国審査では顔認証とパスポートのチラ見だけでOK。違ったのは係員の誘導と人数と案内の方法でした。ダラスの倍ほど丁寧・親切だったような気がします。やっぱり「おもてなし」の国なのだなあ、と誇らしく思いました。。

山口さんはじめ、ご同行の皆様お世話になりました。ありがとうございました。次は機会を作って、もっと多くの皆様とご一緒できば幸いです!!


written by  ライトハウスラバーズ 高橋洋一郎 & 高橋伸子
photo by ライトハウスラバーズ 西村 誠 & 高橋洋一郎


→Lighthouse Lovers 旅行記のトップに戻る

→トウダイジャーナルのトップに戻る