第15回 北関東の灯台巡り
    2009年6月21日(日)〜22(月)


灯台、片思い日記
〜ライトハウスラバーズ北関東の灯台めぐり〜

                                文・写真 不動まゆう


●やっぱりレンズが好き。



“灯ろう”の中にはいったのは初めてだった。

現役のレンズと向かい合わせになる。少し緑がかった大きなガラス。
波紋のような形が外光を優しく反射する、それは
フレネルレンズ

体中の血液が逆流して、総毛だって、瞳孔がグワッと開くのを感じる。
わーいわーい。もう私は大興奮。
「お慕い申しておりました。あなたが大好きです。いつも思いっきり背伸びして、
覗き込んでいたの気づいてました?」レンズに話しかけて、ほおずりする。

鍵をあけてくれた職員の方は、危ないコが来たと思ったかも。でもしょうがない。
だってわたし大好きなんだもん。灯台。とくにレンズ!

今回「ライトハウスラバーズ北関東の灯台ツアー」に参加した一番の目的は、
レンズを間近にみるためだった。
いつもは個人で灯台に会いにいって、「灯台と私」という一対一の時間を
楽しんでいたけど、灯ろうに入ることができなかった。
参観灯台であっても、レンズの下までしかいけないもの。
いつも下から見上げてレンズに想いを寄せていた。
塔に抱きついてはレンズに気を送っていた。

そんな私が、ついに灯ろう内部へ!あぁ、会いたかった。フレネルレンズさま。
汚してはいけないと思いながらも、愛おしさ余ってほおずりする。
レンズに付いてしまったファンデーションを拭いていたら気分は灯台守。
はぁぁ。。感激。



●灯台ツアー
今回の旅で訪問した灯台は5つ。
犬吠埼灯台、鹿島灯台、磯埼灯台、日立灯台、塩屋埼灯台。

参加者はそれぞれの想いで灯台を愛する24名。
6台の車に分乗して1泊2日で灯台をめぐる。
出発の朝はあいにくの雨。
アスファルトに叩きつける大粒の雨のなか、それでもみんなにこやかに集合していた。
私は前日飲みすぎていて猛烈な二日酔い。
異動中の連絡係という大切な任務を背負っていたのに、
役に立つどころか自ら連絡した内容は
「ちょっと気持ち悪いので、みなさん車をとめてください。」という情けないものだった。
ごめんなさい。


・犬吠埼灯台



犬吠埼灯台にはブラントン会のみなさんが待っていてくださった。
二日酔いでぐったりしていた私も、灯台に近づくにつれテンションアップ。
気力でなんとかカバーできるほどに回復した。

灯台見学をする前に犬吠茶屋でブラントン会のみなさんと一緒に昼食をとる。
ブラントン会の活動や、犬吠埼灯台の霧笛についての現状を聞き、
並々ならぬ情熱を感じてグッときた。
その後、二日酔いの私に天丼が運ばれてきてウッときた。自業自得。

犬吠埼灯台には以前にも来たことがあった。
一番近い民宿に泊って、一晩中灯台を眺めていた。
だけどその時は霧笛舎の存在にはまったく気をとめていなくて、
今回その中に入れていただき、はじめて魅力を知るこことができた。

霧笛とは航路標識の一種であり、霧などで視界が悪い際に
音で船舶に位置を知らせるモノ。
圧縮空気によりサイレンを吹鳴する。
日本では犬吠埼灯台が最後まで使用していたが、
2008年100年の歴史にピリオドを打ち、閉鎖された。
解説を海上保安庁の方から聞かせてもらいながら、CDで霧笛の音を聞く。
「ぅむもぉぉぉぉぉぉぉん・・」なんてせつない音かしら。でも牛の鳴き声みたい。
私の中に切ない牛のイメージが浮かび、瞬時にそれはドナドナだと思った。
私の勝手なイメージ。霧笛はドナドナ。
霧が多くでる春には、よく風にのって街まで聞こえていたらしい。
この音は銚子に住む人々のふるさとの風情なんだろうな。
ブラントン会は霧笛舎を撤去せずに、研究資料として残しておこうと活動をしている。

・鹿島灯台


それはすらっと背の高い、男前な灯台。
光取りの窓も縦長で板チョコみたいな形が素敵。私の好きなタイプです。
背が高いので近くからでは写真に収まらず、ファインダーを覗きながら
どんどん後ろ歩きしていったら、お墓の中に来てしまった。
お墓と灯台。なんともシュールなアングル。ますます灯台が凛々しくみえる。
この灯台には登れなかったので、レンズを見ようと望遠レンズでズームしたら、
四角い回転灯器のようでした。ちょっと残念。
やっぱりレンズの灯台少なくなってるなぁと実感する。

現在、灯浮標や小型、中型の灯台はLEDライトや、ハロゲンやメタルハライドランプを
つかった回転灯器に変わっている。
省エネで耐震性にもすぐれ、長寿命なのがその理由だ。
レンズの灯台はどんどん少なくなっていて、現在全国3800ほどの灯台・灯標のうち、
レンズをつかった灯台は1300ほどらしい。約3分の1かぁ・・。
沖縄の残波岬には2回行ったことがあるけど、1回目にいったときはレンズだったのに、
次に行った時は四角い回転灯器に変わっていた。
光の色も白っぽくてなんだかさみしい。

私にとってレンズは、おごそかに鎮座する獅子の光る瞳。
四角くてごろっとしたものがまわっているのと違うんだよなぁ。

このままレンズの灯台がなくなってしまうのではないかと心配なのだけど、
第一等レンズが入った灯台は、これからも保存しようという動きがあって、
免震装置が配備されたとのこと。ずっと壊れないでいてください。


・大洗の旅館で一泊
この日は2つの灯台をみて、18時ごろ旅館にチェックイン。
1時間後には宴会場で夕食が予定されている。
でも私と愛ちゃん(今回の参加者最年少のかわいい女の子)は休む間もなく
二次会用のお酒を買い出しに行く。
私、まだお酒の瓶すら見たくないんですけど。再び自業自得。

夕食では、自己紹介や、灯台への想いを発表しあって親睦を深める。
またお父さんが灯台守だった方々の思い出話を聞く。
灯台での暮らしを聞けて、私の「もし私が灯台守だったら・・」という妄想に
リアリティが加わった。うれしい。

最後はお約束の
「喜びも悲しみも幾歳月」を合唱していったんお開き。
でも夜はまだまだ終わらない。
今回の平均年齢はいくつぐらいになるのでしょうか・・
本当に皆さんはつらつとお元気で、二次会もやる気満々ムード。
私は温泉につかってから少し遅れて二次会の部屋にいったんだけど、
その10畳ぐらいの部屋には15,6人ぐらいが詰まっていて、
しかもすっかりできあがっていた。
なんかね・・お酒とおつまみと、“加齢なんとか”の匂いがミックスされて
ムンムンとしていて、浴衣がはだけてモモヒキが露出しちゃってる人もいたり、
灯台の話と健康診断の結果の話がテレコに会話されたり、
くしゃみが止まらなくなっちゃう人がいたり、
頼まれてもないのに勝手にストリップしちゃう人もいたり、
もうなんだか愉快でとってもミラクルな夜だった。


・磯埼灯台


2日目も雨はふったりやんだり。
ホテルをでてさっそく磯埼灯台に向かう。
この灯台でうれしかったのは、上に登るのが直バシゴだったこと。
なんだか観光っぽくない灯台という感じでソソラレル。ぐんぐん上って灯ろうへ。
もちろんレンズみせてくれるよね?ってかなり図々しくなった私がいる。
あらためて考えると、我々のために時間をつくり、中へ入れてくれて
解説までしてくれる海上保安庁の方に心から感謝しています。
旅を通じてずっと大変なご厚意をいただきました。
さて、この灯台はLB−H120型灯器で、電球はハロゲン。
来年度からLB−M30型灯器に変換し、メタルハライド電球になるそうだ。
回転灯器だけど中に組み込まれたレンズはフレネルということで、ちょっとうれしかった。


・日立灯台


本当はツアーの日程に組み込まれていない灯台だったけど、
海保の方に先導していっただき拝見することができた。

私はこの灯台とても好き。
公園の中にあり、灯台訪問初心者の人でも楽しみやすいんじゃないかと思う。
それにこのシルエット。まるで拘束服をきさせられて立たされているみたい。
ドSな癖のある私は別の意味でもゾクゾクしちゃう。

それにレンズがまたいい!
ちょっと縦長のレンズは、第三等三面フレネルレンズ。
三面!みっつの顔!阿修羅みたい!!わーいわーい。
この灯台はとても好きになってしまったので再び訪れようと思った。
今度は夜くるね。働いているとこ、見に来るからね!


・塩屋埼灯台
 

なんていうのかな、灯台の首のところ?柵の下の部分っていえばいいかしら。
とってもおしゃれだと思う。エリザベス朝時代の貴族みたい。
遠くから見てもレンズの存在がはっきりわかる。
真ん丸の大きな瞳。第三等大型2面レンズ。
光達距離は約40キロ。40キロの光のスジを想像してみよう。
それは夜、小さな電球の灯りが、あのレンズで44万カンデラの強い光となって、
漆黒の海と暗い空の境界、そう、黒と黒の間を真っすぐに走るっ!!!
人と船を守るため、一晩中休まずに働き続ける!
あぁ、腰がゾワゾワする、膝がガクガクする。その雄大さにひれ伏してしまう。
もう好き!すごい好き。私をどうにでもしてほしい。

旅で出会ったすべての灯台を思い出しながら、
帰りの車中でさらに灯台への想いを実感した。

●結びに
灯ろうからは、レンズがいつも見ている海の景色をみた。水平線。
夜、暗い海にいるのはきっと不安だと思う。夜の海は怖い。
だから灯台は眠らずに光をとどかせる。少しでも遠くまで、光の手を伸ばす。
きっとたくさんの船が灯台からの温かいメッセージをうけとっている。

灯台は私の憧れ。
いつか灯台みたいな孤高な存在になりたいって思っていて、そして強く恋してる。
でも陸にいる私のことを灯台は気付いてくれない気がするから、
いつか免許をとって海にでたい。そうしたら、灯台と目が合うかな。

夜、寝る前にいつも思う。
いまこの時間も日本全国の灯台がまわってるんだなって。
小さな電球が灯り、レンズで強い光になって、日本中のはじっこがキラキラしてる。
海岸線を空から想像する。神様のアングル。
北海道から沖縄まで、とくに行ったことのある灯台は念いりに想像していると、
いつの間にか眠ってしまう。

大好き、灯台・・・。


塩屋埼灯台にて記念撮影


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